ノートは第2の脳である
マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか 大嶋 祥誉 SBクリエイティブ 2015-02-27 |
マッキンゼーといえば、現役コンサルタントも(大前研一さんを筆頭に)卒業した方も
多方面で活躍されている戦略コンサルティングファームです。
マッキンゼーのようなコンサルティングファームでは、様々な案件を
短期間でこなす事をミッションとしており、扱う分野も様々です。
本書はマッキンゼー出身の著者がトップ・コンサルタントが実践している
ノート活用術を解説した一冊です。
ノートは「思考ツール」「問題解決ツール」である、と定義し
ツールとして活用するための具体的な方法が事例も交えて説明しています。
ノートは過去の記録のためでなく、よい未来をつくるためにある
この一文がぐっときました。
ノートを議事メモなどにしか活用できていない人には是非読んで欲しい一冊です。
■3つの心構え
ノートを思考ツール、問題解決ツールとして活用する場合、3つの心構えが必要です。
1.仮説を考えながらノートを取る
すべては仮説から始まる、というのが問題解決の大前提です。
仮説とは、問題解決をするときの「問題」に対する「仮の答え」です。
問題に対するアプローチはたくさんあり、それを全て検証する事は不可能です。
また、複数を同時に進める事は効率も悪く、時間もかかってしまいます。
その中から1つ絞り込んで、一定の視点から問題解決に取り組むことが重要です。
2.アウトプット志向
問題解決のためにノートに何かを書くという行為は、ノートに書く事が
ゴールではありません。
何らかのエンドプロダクト(最終成果物)を作るというゴールに向けて、
アウトプットを意識して行うのが「問題解決のためのノート術」です。
最終的に第3者に対して何かをアウトプットする、という意識は重要です。
なんとなくのメモを書くにしても、その内容について他の人から意見をもらったり、
それをもとに議論したりできるレベルを意識する必要があります。
アウトプットを意識すると、ノートの構成や書き方に意識がいきます。
3.ストーリーラインで考える
マッキンゼー流のノート術の特徴は、すでに起った過去の記録ではなく、
問題を解決すること、つまり、未来をよくするための「プロアクティブ」な
ノートというところにもあります。
それは、常にさまざまな要素がノートで活性化している「生きたノート」だということです。
このあたりはさすがマッキンゼーという感じです。
ストーリーで考える事のメリットはエンドプロダクトに近い形で思考が働くという事です。
ノートに書かれた内容を成果物に落とし込む作業も効率的にできます。
■問題解決の基本プロセス
「ノートを問題解決に利用する」といっても、その基本プロセスを
理解していないと何から手を付けていいのかわかりません。
問題解決の基本プロセスは以下の通りです。
<Step1>本質的な問題は何か?つまり何が真の問題(イシュー)なのか?を定義(設定)する
<Step2>仮説は何か?(問題に対しての仮の解決策)を立てる
<Step3>仮説を検証する
<Step4>アウトプット(成果物)にまとめる=プレゼン資料、報告書にする
この基本プロセスは先に紹介した「心構え」ともリンクしています。
本書では、このステップ毎にどのようにノートを利用するのか、という内容が記載されています。
細かい所は本書を見ていただくとして、個人的には各Step共通である
『行動に繋がるように具体的に書く。具体的に見えてないものは改善するのが難しい』
という内容がためになりました。
問題を抽象化していくということはよくやることですが、それが行き過ぎると
動けなくなる、いわれて見れば確かにそうです。
■結果を出すために
本書では、ノートを一層活用するための「勘どころ」が紹介されています。
マッキンゼー流ノート術における大きな目的は「問題解決」です。
さらに「問題解決のためのノート術」をブレイクダウンしていくと、
そこにはノートを取る「3つの目的」が出てきます。
まず、一つが「思考をインデックス化する(自分の思考を整理する)」という目的。
二つ目は「情報や考え方を誰かと共有する」という目的。
三つ目が「アウトプットを作るベースにする」という目的です。
個人的には一つ目の目的が一番重要だと思います。
自分のアタマの中は整理されてそうで、まったく整理されていません。
思考がグルグルと回っている時なんかは、思いついた内容を記憶しておく事も難しいです。
そんな時にノートを利用して(手を動かすことで)、記録する事ができ、
同時に記憶の定着の助けにもなります。
■編集後記
本書はノート活用の目的が「問題を解決するため」とはっきりしているため、
全体的な構成が非常にわかりやすくなっています。
使用するノートも3種類(マッキンノート、方眼ノート、ケンブリッジノート)が
紹介されていますが、詳しい内容は本書をご覧ください。
コンサルタントという職種にこだわらず、広い範囲で利用可能なメソッドだと思います。
私のようなPM職であれば、日々発生する課題に対して、どのようなプロセスで
解決にあたればよいのか?そもそも問題はどこにあるのか?など。
事象や自分の思考を整理するのに非常に有用です。
また、仕事だけでなく、プライベートな課題に対しても本書での問題解決アプローチは
威力を発揮すると感じました。
ただし、自分一人の問題である時限定です(相手がいると引いてしまう可能性もあるので。。。)。
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