生産性の高い人のアプローチ
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」 安宅和人 英治出版 2010-11-24 |
ビジネスにおいて評価される軸のひとつに「生産性」があります。
この「生産性」ですが、その定義は結構曖昧(人によって違う)だったりします。
世間一般では
「テキパキとたくさんの量をこなす人」
「短い時間で仕事を仕上げる人」
「価値が高い仕事をやる人」
という定義になるかと思います。
ちなみに、Wikipediaでは
生産性(せいさんせい、Productivity)とは、経済学で生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度、
あるいは、資源から付加価値を産み出すさいの効率の程度のことを指す。
という定義になっています(イマイチわかりません)。
本書での生産性を「成果/(投下した労力・時間)」と定義し、
分子である『成果の質』にフォーカスを当てた一冊です。
著者がマッキンゼー出身なので、フレームワークの話がバリバリでてくるかと
思いきや、そうではなく、もっと本質的な内容になっています。
MECEや3Cなどのフレームワークを知るだけで満足してしまっている方にオススメです。
■考えると悩むの違い
考えること、と悩むことの違いはなんでしょうか。
本書では
悩む:前提は「答えがない」
考える:前提は「答えがある」
と定義しています。
決して悩む事自体を否定している訳ではないですが、
ビジネスにおいては悩む行為は生み出すものがないため、効率が悪いです。
■バリューのある成果とは
生産性の定義の分子である「成果」の「質」を挙げるには、
どのような成果を出せばよいでしょうか。
本書では「イシュー度」が高く、「解の質」が高いものがバリューのある成果だとしています。
それぞれ定義が独自なので、本書内での定義を引用します。
イシュー(issue):
以下の2つの条件を満たしたものです。
・2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
・根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題
イシュー度:
自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
解の質:
そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い
つまり、必要性の高い問題に対して、明確な答えが出せている、ものが
バリューのある成果と呼ばれるものです。
バリューのある成果への道は、
・バリュー度をあげる➡解の質をあげる
・解の質をあげる➡バリュー度をあげる
という2つありますが、本書では前者の道を進めています。
後者の場合、解の質をあげるために、必要のない「量」をこなす必要があるからです。
■よいイシューの条件
先に紹介したイシューですが、結構抽象度が高い定義になっています。
具体的にイシューを立てる場合、どのようなイシューが望ましいのか、
その条件を本書で以下の3つを挙げています。
・本質的な選択肢である
・深い仮説がある
・答えを出せる
それぞれのポイントは次のとおりです。
<本質的の選択肢である>
カギとなる質問を定義し、選択肢を提示すること。
それがその問題や課題に対する本質的なところから生み出されている事。
<深い仮説がある>
常識に捕われたものではなく、ゼロベースでの仮説があること。
それの根拠となるものが新しい構造で説明ができること。
<答えを出せる>
仮説の証明によって、客観的な答えがだせること
■編集後記
個人的に本書のポイントは、本書の前半部分だったので、後半部分の詳細は本書をご覧ください。
本エントリーでは紹介していませんが、具体例も掲載されているので、
抽象論だけでは終わらないです。
システム開発における生産性の分子は(語弊があるかもしれませんが)
基本的に「開発量」です。
生産性を評価する場合も工数の大部分が開発作業に割当てられているため、
「同じ労力・時間でどのくらい開発できたか」
で評価します。
ただ、コンサルタントやマネジメントに関する生産性を評価する場合は、
このような基準にはなりません。
「提案書のページ数」や「進捗報告書のページ数」を基準にしても
何の意味もありません。
このような職種の人は本書で定義されている「イシュー」ベースの
成果で評価されるのが正しいでしょう。
ただ、これを定量的に捉えるのは中々難しいと思います。
どのようにイシューベースの成果を定量的に図る事ができるか。
評価する側のスキルが求められますね。
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