不完全を受け入れることで、課題を解決する思考法
「デザイン思考」という言葉が世の中に出てきて大分期間が経っため、言葉自体の認知度はあるような気がします。ですが、私自身この言葉の意味を人に説明することができません。
その理由は、
・「デザイン」という言葉が漠然としている
・よく言われる「0から1を生み出す思考法」と言われてもピンとこない
・右脳的なイメージがあり、なんだか馴染まない(自分が左脳人間なので)
など様々です。
本書はこんな私みたいな頭の硬い左脳人間の方に、「デザイン思考とはこういうもので、ビジネス思考はここが違います」と教えてくれる一冊です。著者自身がイリノイ工科大学デザイン学科(ID)に留学し、学んだ経験などをともにまとめられています。実際に行ったワークショップの流れなども書かれているため具体的です。
本書は章ごとに「デザイナーの常識」と「ビジネスマンの常識」が併記されています。
そのため、一般的なビジネスパーソンが考えていること(やっていること)と、デザイナーの考え(行動)を対比ができ、そこを読むだけでもその違いを理解することができます。
ビジネスを生業としている全ての人が読みやすい形になっています。
本書の特徴的なところは、右脳的な要素が強いデザイン思考を思考のフレームワークとして定義し、かつ、プロセスとゴールを明確にしているところです。
まず、デザイン(構想)とビジネス(商売)とエンジニアリング(実現)の関係を整理します。その後、デザイン思考の思考法の部分について詳細な説明が入り、方法論や技法の話に繋がります。
説明の流れがわかりやすいため、とても読みやすいです。
思考法というと、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど左脳による論理思考が有名ですが、IDに通うデザイナーが目指す思考スタイルは、左脳と右脳の両方を活用したハイブリッドな思考法です。それは、左脳の論理の力と、右脳のイメージの力を両方バランスよく使いながら、自分ならではのユニークな切り口を出すという、創造=「知的生産」を日々実践することになります。
デザイナーから学ぶハイブリッド知的生産術
「デザイナーの思考法」をこのように説明しています。ハイブリッドな思考法と文章で書くとわかりにくのですが、式にすると以下のようになります。
知的生産性=(インプット✖️ジャンプ✖️アウトプット)/時間
この式の「ジャンプ」の部分が右脳的な要素が強い部分になります。
このジャンプの部分があることで、インプットからアウトプットへの直線的な発想ではなく、他の軸への横断的な発想をすることができます。(詳細な内容は本書をご覧ください)
デザイン思考のプロセスは、ステップではなく、何度も行き来を繰り返して質を上げていくものなので、同じガイドでも地図というよりは羅針盤に近いものです。
その際に重要なのは、以下の2つのモードを振れ幅大きく行き来することで、課題や解決策を次第に具現化していくことです。
1. 具体と抽象の振れ幅
2. 現実と未来の振れ幅
ステップでなくサイクル型(繰り返し)で進めていく、という部分はデザイン思考の特徴的な部分です。はじめから明確なゴールがあるわけではなく、ある課題に対してどのような解決策があるかをトライアンドエラーを繰り返しながら進めていきます。(図にするとこれ)
その繰り返しの中で、初期に課題としていたものを再定義することもあります。
デザイン思考においては、誰もが同意できる「客観的な正しさ」よりも、アイデアを生み出すためのユニークな「主観的だが面白いストーリー」を集めるという点に主眼が置かれます。
「正しい」ということを必ずしも是としないことで、「面白い」というものが生まれるのだと思います。
21世紀のビジネスで必要なスキルの定義の1つに「創造性とイノベーション」があります。このスキルのベースとなるデザイン思考がどのようなものなのか、本書を読むことで掴むことができます。
また、本書にはデザイン思考をキャリアに活かす方法なども書かれているため、これからのキャリアプランを考える上でもとても参考になりました。
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