データをビジネスに活かす見本
ワークマンはここ数年急成長している会社です。高機能だけど低価格という誰もやってなかった領域で売り上げを拡大しており、その中で様々な施策を打っています。
本書は急成長の立役者である土屋哲雄さんへのインタビューを通じて、ワークマンの戦術について記載しています。
店舗作りやフランチャイズの話もあるのですが、個人的にとても良いと感じた「大躍進の裏に「データ経営」あり」の部分に特化して紹介したいと思います。
はじめに ワークマンとは何者か
第1章 ワークマンを変えた男
第2章 大躍進の裏に「データ経営」あり
第3章 ものづくりは売価から決める
第4章 ファンの「辛辣な文句」は全部のむ
第5章 変幻自在の広報戦略
第6章 店づくりは壮大な実験
第7章 継続率99%! ホワイトFCへの道
第8章 「変えたこと」と「変えなかったこと」
第9章 アフターコロナの小売りの未来
突出したデータサイエンティストはいらない
土屋さんがデータを重視するまで、ワークマンでは社内にほとんどデータはなかったそうです。データがなくとも作業服業界では独走状態であった為、現場の経験と勘で発注などは行われていました。
土屋さんがデータ経営に舵を切った際に決めたことは、「全員がやる」ということです。つまり、得意な人だけがやるのではなく、社員全員がデータを意識できるようにするということです。その為に社員向けにデータ分析講習会を実施し、定性分析や汎用分析を行えるようにしました。
売上、在庫、店舗出展、商品開発などの全てにおいて、データを取得・分析することで客観性をもたせると共に、仮説・検証サイクルを繰り返し実施することができます。
データ分析が得意な社員ももちろんいるので、その人たちはデータ分析チームとして、より専門的なデータ分析を行う部署に配属されます。
AIでなく、エクセルでやる
ワークマンのデータ分析はAIではなく、エクセルで行っています。
AI導入も検討したそうですが、検討の結果見送ったそうです。
AIにはプロセスがなかった。思考のプロセスがブラックボックスになって見えない。
AIは大量のデータから相関関係を見つけるのは得意だが、ビジネスで必要なのはむしろ因果関係を見つけること。
これが見送った理由です。
今までデータを意識してなかった組織にいきなりAIを導入するのはよくない気がします。自分たちでデータを見て、考えて判断する。このプロセスを繰返し行うことで、データから発見したものの価値が判断できるようになります。
システムは100のうち、まずは10作る
システム投資に対する考え方も明確です。
機能が100個あるとしてまずは10個ぐらいつくってみる。足りなかったらさらに機能を10個追加する。10個でつくって、20個に増やせば、この20個の機能は完全に使う。ところが、最初から100個でつくっちゃうと使わない機能が80個もある。
小さく作って育てていく、という考えのもと作っています。本書には記載はありませんが、それを実現するための開発プロセスやアーキテクチャが組まれているのだと思います。
全体的な感想
ワークマンのデータの活かし方は非常に合理的だと思いました。
世の中の流れに乗っかり、いきなりAIを導入するのではなく、まずは自分たちでデータの扱い方を正しく学ぶというのは、今後のAI導入検討の時の意思決定精度も上がると思います。
データリテラシーを上げる為の一番の近道は実際にデータ分析をやってみることです。
いくら理論を学んだり、ツールの使い方を学んでも体験に勝る学習はありません。
それを全社員でやっているワークマンはこれからもデータに基づいた意思決定がされていくのだと思いました。
編集後記
ワークマンの商品は釣り用に購入したことがあります。
値段も安くて、機能性抜群。冬の海釣りでしたが、防寒・防水バッチリでした。
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