戦略的技術系幹部になるためのキャリアパス
ソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせると初めの頃は知らない技術的な分野をどんどん知ることができ、新しい言語でコーディングをし、動くものを作り、作ったものを改善し、といった感じで(好きな人は)ワクワクした日々を送ることができます。
しかし、キャリアを積んでいく内にいくつかの壁にぶつかります。
いつまでもコーディングばかりしていられない
後輩のフォローをしないといけない
チーム管理をしないといけない
などなど。
この壁は悪いことではなく、エンジニアとしてキャリアアップし、組織や社会に貢献するという意味では必要なことです。
本書はエンジニア向けのキャリア指南書です。
新人エンジニアのメンターとして教える立場を初めて経験するところから経営幹部のCTO(本書の定義では戦略的技術系幹部)になるまで、それぞれの役職での役割が書かれています。キャリアパスは本書の目次を見るとわかりやすいです。
1章 マネジメントの基本
2章 メンタリング
3章 テックリード
4章 人の管理
5章 チームの管理
6章 複数チームの管理
7章 複数の管理者の管理
8章 経営幹部
9章 文化の構築
マネジメントの基本
エンジニアを含むビジネスパーソンはいきなり管理する側になることはありません。
まずは管理される側からスタートします。
管理される側として上司に何を求めるか、ということが管理(マネジメント)をする側として必要なことでもあります。
具体的には、
「1対1のミーティング(1on1)」
「フィードバックと指導」
「トレーニングとキャリアアップ」
です。
3つの中から1on1を紹介します。1on1の目的は2つあります。
1つ目は「上司と部下との間に人間的な繋がりを作ること」です。
2つ目は「要検討事項について上司と1対1で話し合う定期的な場を設けること」です。
1on1を通じて双方のことを理解することで、キャリアや困っていることへのアドバイスを適切に行うことができます。
テックリード(tech lead)
テックリードとは「プロジェクトに携わるエンジニアチームの「技術上のリーダー」」のことです。
(中略)
テックリードのおもな役割
本書の内容を箇条書きにして記載
システムアーキテクトとビジネスアナリストとしての役割
プロジェクトプランナーとしての役割
ソフトウェア開発者兼チームリーダーとしての役割
エンジニアを数年経験するとチームの技術的決定や方針決めを任されることがあります。このようなロールがテックリードです。
テックリードになるとそれまでとやることの幅がグッと広がります。
幅が広がることで、時間欠乏症になるので、個人的にはテックリードになる為には技術だけではダメで、人に任せたり、チームで作業する勘所を掴んでいる必要があると思います。あとは判断力・決断力ですね。
本書では優秀なテックリードについても書かれていて、これからテックリードをやる人には非常に参考になります。
・アーキテクチャを把握している
本書の内容を箇条書きにして記載
・チームプレイの大切さを心得ている
・技術的な意思決定を主導する
・コミュニケーションの達人である
技術的な意思決定をする為に知識を蓄えるのは大切ですが、あまり詳しくないところについては知っている人を知っているというのもとても大切です。
ハードウェアもミドルウェアもネットワークもセキュリティもデータベースもアプリケーションも知っているような人はなかなかいないですからね。
チームの管理
チームを管理する立場になると、いわゆる部下を持つ立場になります。
初めて部下を持つ立場になったことによる役割が本書でも定義されているのですが、私が一番為になると感じたのは、チームのデバックについてです。(言い方がエンジニアっぽくて好きです)
時には、機能不全に陥ったチームの管理を任されることもあるでしょう。「機能不全」とは具体的にどういう状況を指すかというと、成果物の引き渡し期日を毎度のように守れない、チームのメンバーが惨めな思いをしている、メンバーが次々に辞めていく、プロダクトマネージャーがイライラを募らせている、プロダクトマネージャーに対するチームメンバーの不満が膨らんでいる、などです。
実際のシステム開発・ソフトウェア開発でも上記のような状況はよくあって、原因が分かっていればいいのですが、うまくいっていない事象(事実)を整理するだけでも大変な時があります。
これらの状況をどのように改善すれば良いのか、ということですが、同じ事象でもプロジェクトによって、チームによって原因が異なるので、銀の弾のような答えはありません。
第三者的に外から見るだけでもダメですし、中に入りすぎて一緒に燃えてしまってもいけません。この辺りのスタンスと立ち回りがデバックには重要なのだと思います。
経営幹部
キャリアの最終局面としての経営幹部ですが、本書はエンジニアがキャリアアップの末に到着する経営幹部なので、もちろん技術系の幹部になります。
しかもこの本は、エンジニアとして何年かコードを書く経験を積んだのちに経営の道へと舵を切り、以後、順調にキャリアップを果たし、晴れて幹部になった人たちについて買いたものです。エンジニアである我々はテクノロジーの専門家ならではの責任をーー絶えず変化続けるテクノロジーの世界でキャリを積んできた者ならではの責任をーー担っているのです。
技術系の幹部の役割はその会社の事業によっても変わってくるものだと本書では記載されています。ただ、一般的に役割として以下のように記載されています。
・研究開発(R&D)
本書の内容を箇条書きにして記載
・技術戦略・ビジョナリー
・組織化
・執行
・技術部門の対外的な「顔」
・社内の技術インフラとその運用
・事業化
この役割のいづれかを担当することが技術系幹部になります。
テクノロジーを利用してい事業をしている事業会社とソリューションを提供している会社とでは重きを置く能力が違います。今後意識しておきたい内容です。
個人的にはテクノロジーに詳しいことはもちろんのこと、組織論やマーケットニーズの把握、コミュニケーションに優れた人が幹部になる人だと思っています。
全体的な感想
キャリア本は今まで何冊か読んできましたが、本書のようにエンジニアに特化したキャリア本は初めて読みました。
内容は自分の業界や仕事内容に近いこともあり、共感できることが多くありました。また著者もエンジニアであることから言葉の端々にエンジニアっぽい記述があり、楽しみながら読むことができました。
本書はどちらかというと事業会社の技術部門のエンジニアがキャリアアップしていく過程が書かれている為、私のようなSIerよりも事業会社の情報システム部門の人とかが見るとより共感できるのかもしません。
編集後記
エンジニア向けキャリア本は初めて読んだと書きましたが、以下の本が積読状態でした。
夏休みの課題図書にでもしたいともいます。
コメント