「時間」価値が高まった時代のビジネスへの取組み
時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか? 松岡 真宏 草思社 2014-11-20 |
スマホの普及により、以前は何もすることができなかった
「すきま時間」にたくさんのことができるようになりました。
それはゲームだったり、メールチェックやRSSによる情報収集など人により様々です。
このように以前(スマホ普及前)と比べて時間に対する考え方が
変わってきた時代において、どのようなビジネスが求められているのか、
本書は「時間資本主義」という言葉を用いて解説しています。
時間資本主義時代にビジネスパーソンがやるべきことも書かれており、
非常に勉強になる一冊でした。
今を生きるビジネスパーソン全員にお勧めの一冊です。
■時間資本主義
人は様々な「制約条件」のもと生活をしています。
環境の変化により、この制約条件は一つ一つ軽減されていきました。
ただ、「時間」に関して言うと、以前のまま「制約条件」として残り続けています。
本書では、以下のような視点で社会を見ることで、現在求められている
ビジネスを考えています。
時間という「補助線」を引いて現代社会の社会を眺めてみると、
これまでの枠組みではとらえきれない、企業の経済活動や
個人の消費行動が浮かび上がってきました。
時間という線を引いた人々の生活は大きく、
「かたまり時間」と「すきま時間」という2つにわけることができます。
「かたまり時間」とは一時間以上あるまとまった時間。
「すきま時間」とは5分、10分程度の時間の事です。
従来は「かたまり時間」は「すきま時間」に比べ時間価値が高かったです。
(というより、むしろ「すきま時間」の価値が低かった)
その理由は「すきま時間」にやれることが限られていたから。
ただ、現代社会ではこの「すきま時間」でやれることが多くなっています。
その要因はスマホの普及とそれを活かせるプラットフォームの拡大に
あります。
「すきま時間」の時間価値が高まってくると、価格決定メカニズムの
「時間」という要素の比率が高くなっていきます。
「どれだけ時間を節約できるのか」(節約価値)
「どれだけ快適な時間を過ごすことができるのか」(創造価値)
本書では、上記2つを商品としての時間の価値として定義しており、
これに対してどのようなビジネスが展開できるかを検討しています。
■「スマホ」×「すきま時間」=「時空ビジネス」
時間資本主義の社会では、
「時間を付加価値とするビジネス」
がニーズとして求められます。
付加価値の観点は前述した「節約価値」と「創造価値」です。
時間のロスを気にし出す消費者はテッパンを多用するようになります。
俗にいうサンクコストを重視するようになります。
では、テッパン以外はダメかというとそうではないです。
上記2つの価値に対するアプローチを明確にすることで、
消費者の行動の中に入り込むことができます。
本書ではスマホを利用した配車サービスの「ウーバー」や
ニュースのまとめアプリなどが紹介されています。
■クリエイティブクラス人材
では、時間資本主義時代の人材像とはどのような人でしょうか。
本書では、個人的にはショッキングは内容が書かれています。
ホワイトカラーは生産性が上がってできた時間に、
さらにスキルアップを図って生産性を上げようとし、
負のスパイラルに陥っていく。
ビジネス書を読んで得られる仕事術や、すきま時間で勉強して
取れる資格もコモディディ化していくスキルに過ぎないからだ。
では、どうすればよいかというと。
効率化されてできた時間は付加価値を生み出すために使うべきなのだ。
ゆったりと過ごすことで脳を活性化し、クリエティビティを高めるほうが、
よっぽど将来的な時間価値を上げることができるだろう。
付加価値型のサービス業で成果を出すためには、簡単な方法がある。
人と会うことだ。人に会わない限り、ユニークな価値は生まれない。
それは情報というものの相対的価値が下がっているからだ。
インターネットに公開されている、誰もが手に入る情報ではダメなのだ。
直接その人聞いた話にこそ価値がある。
質の高い情報を取得し、空いた時間でじっくり考える事が重要とのこと。
本書では時間とお金の人材マトリクスというものが紹介されています。
時間とお金の人材マトリクスはsmoothさんのエントリーに
図が乗っているので、そちらを見ていただくとわかりやすいです。
■編集後記
本書で述べられている通り、人々の生活の中での
「時間」の位置づけと価値観が変化していっています。
ビジネス全般に対してこの変化に対するアプローチが今後
増えていくことは間違いないでしょう(ニーズも増えるので)。
自分ごととして考えると、このような変化に求められる
システムとは何か、働き方はどう変わるのか、と考えるのは
非常に有益でした。
本書の中では、人は最後は人と直接会うとため、都市化が進む、
とありましたが、
「人と直接会わなくても会っているのと同じ状況を再現する」
仕組みがあれば、この流れも変わると思います。
現状のテクノロジーではできない部分もありますが、
5年も経てば、リアルなバーチャル空間が構築できるように
なると思います。
(それとも「どこでもドア」が先にできるか)
そういう時代に自分はどのような人材であるべきか、
難しいですが、面白い命題です。
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