シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 安宅和人著

書評

日本の現状(課題)とそれに対する打ち手

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 (NewsPicksパブリッシング) | 安宅和人 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon
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現在の日本に対する悲観的な評価は様々なメディアで取り上げられています。
国力然り、教育の分野やICTの分野などでアメリカや中国などにここ数十年で
どのくらい差を広げられているのか、が暗くなる基調で書かれています。

本書ではそんな暗くなるだけの現状認識だけでなく、未来のために
以下のような内容が記載されています。
 現状の日本の状況を様々なデータを利用して明らかにし、
 日本が持つ課題を見えるようにしています。
 その上で、日本に眠っているリソースを活用するための
 現実的な打ち手を提言し、実現するためのリソース(予算)配分に
 ついて記載されています。

今の日本の現状や課題に対するアプローチがものすごく明確です。
個人的に日本の教育分野に対して漠然とした不安があったのですが、
本書にある打ち手を見て希望が見えました。早く実現されることを期待したいです。
ものすごくお勧めの一冊です。全てのビジネスパーソンに読んで欲しい一冊です。

データ×AI

様々なものからデータを取得し、格納・分析できるようになった現代では、
もの事の変化は線形ではなく、指数関数的になっています。
指数関数なので、決して不連続ではなく(いきなりすごくなるのではなく)、
始めの変化は線形と同じで、途中からの伸びるスピードが凄まじくなります。

AIの正しい理解とはなんでしょう。本書では、AIを次のように定義しています。

計算機×アルゴリズム×データ=AI

アルゴリズム(機械学習や深層学習)の部分をAIというように定義しているものもありますが、アルゴリズムはAIの一部分であり、データや計算機(計算する環境)も含めたものがAIです。

集めたデータをアルゴリズムを利用して分析するのがAIだとして、それを正しく利活用するための方法はどのようなものなのでしょう。本書の定義では以下のようになっています。

<データ×AI利活用の基本ループ>
1. サービスの価値
2. ユーザ数・ユーザ利用
  ↓情報収集
3. データ状況把握
  ↓洞察
4. アルゴリズム
  ↓利活用
5. 打ち手の質(1.に戻る)

このようなループを回すことで、質の高いデータ収集、分析が可能になります。
この利活用ループは特定の分野だけで起こるのではなく、全ての分野に適用されます。

日本における課題

本書でもGDPや低い生産性などの日本の課題が記載されていますが、その中で個人的にヤバイと思った「埋もれたままの3つの才能」という部分について書きます。

若者
 正規・非正規という分断と低い最低賃金が原因で、生活することで精一杯に
 なってしまい、本来発揮されるべき才能が正しく発揮できていない。
 また、日本の貧困層の増加に伴い、教育面でのサポートが行き届かないことに
 よりさらに分断が助長されていっている。

女性
 家事に費やす時間が他国に比べて同レベルだが、男性の家事時間は極端に少ない。
 つまり、男性との家事格差が大きくなっていることで、女性の機会を奪っている。
 男性の家事時間が少ない原因として、低い生産性が挙げられる。

シニア
 65歳で定年という制度により強制的に『伐採』されてしまう。
 平均寿命から見ても年齢による強制伐採は経験豊かでまだ働けるシニアの
 活躍の場を奪っている。

この3つの才能と解き放つことができる打ち手を打つことができれば、
生産性を含めて日本の教育・労働に関する問題は解決するのではないかと思います。
少なくとも各層のエネルギーを適切な方向に導くことができます。

求められる人材とスキル

AI×データの時代に必要となる人材とはどのようなスキルを持った人なのか。
本書で挙げられている2つの定義を引用します。

未来の鍵を握る「異人」
 ・あまり多くの人が目指さない領域のいくつかでヤバイ人
 ・夢を描き、複数の領域をつないで形にする人(課題×技術×デザイン)
 ・どんな話題でもそれぞれ自分が頼れるすごい人を知っている人

「異人」は変わった人に見られることが多いです。(私はこういう人は好きですが)
社会として異人を排除しないことが重要です。

データ×AIの力を解き放つための3つのスキルセット
 ・ビジネス力
  課題背景を理解した上で、ビジネス課題を整理し、解決する力
 ・データエンジニアリング力
  データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用
  できるようにする力
 ・データサイエンス力
  統計数理、分析的な素養の上、情報処理、人工知能などの情報科学系の
  知恵を理解し、使う力

これらのスキルは3つ保持することに価値があります。
どれから1つでも欠けていると、価値を出すことができません。

スキルを持った人材をどのように確保するのかというと本書ではいくつもの
アプローチが定義されていますが、特に気になったのが、巨大リソースの再構築です。
(なぜかというは私はどちらの層にも属しているからです)

日本には現在2つの巨大なリソースがあります。
1つは「技術者・エンジニア層」、もう1つは「ミドル・マネジメント層」です。
前者はICTエンジニアだけでも100万人はいると考えられ、この人たちが持っている技術的な素養とドメイン知識にデータ×AIスキルを加えることでデータプロフェッショナルになる人は相当数に上がります。
後者はエンジニアリング力を磨くのではなく、分析を含めたサイエンス力を強化することで、変革担当(トランスフォーマー)として活躍することができます。

リソースの再配分

データ×AIが全ての産業を対象に発達していく中で、打ち手を実行していくためには適切なリソース(予算)の再配分が必要になります。
本書では、国の予算配分と運用基金からどのように未来への投資をしていくか、ということが詳細に書かれています。

未来への投資とは「科学技術への投資」「人材育成への投資」の2つです。

日本の科学技術への投資は年々少しずつ減っています。
毎年ノーベル賞の時期になると日本の科学技術・基礎研究はすごい、という基調の記事が出たりしますが、賞をとっている研究自体はだいぶ昔のものが多いです。
長い年数をかけて研究してきたからこその成果であり、研究とは数十年単位で取り組むべきものなのです。この分野に対する投資が今後も必要であることは、火を見るより明らかです。

人材育成への投資に関しては、教員・学生それぞれに対する支援を厚くすると言うことです。教育格差という言葉が話題になって久しいですが、金銭的問題が理由で教育を受けたくても受けれない人材がいるのは国家にとっては損失でしかありません。適切な場所に適切な支援を届けることで、リテラシーの高い人材育成をすることができます。

具体的なリソース配分の詳細は本書をご覧いただくとして、必要なリソースは国家予算の数%に過ぎません。これを捻出することはそんなに難しいことではないと思います。

全体的な感想

本書は世の中の変化に対して、日本の現状(課題)をファクトベースで明らかにし、さらに打ち手(対策とリソースの再配分)を示したものです。
著者が長年ストラテジストとして活躍していることもあり、各課題に対する数字の引用もとても多く、納得感のあるものばかりでした。

また、今の自分の立場やスキルを考えると明らかに足りないスキルがあり、それに対してどのような対策を打つ必要があるかもわかってきました。

この内容は国や政府の方とも話をしている内容らしいので、少しでも早く実現して欲しいものです。

(参考)イノベーションを通じた生産性向上に関する研究会「“シン・ニホン” AI×データ時代における日本の再生と人材育成」

編集後記

毎度のことですが、前回の書評アップからだいぶ時間が空いてしまいました。
今回の記事をアップするにあたり、WordPressのバージョンアップをしたり、テーマをCocoonへ変更したりしました。
WordPressの新しいエディタとCocconのBlocksは非常に使いやすく、書きやすいです。折角書きやすくなったので、今後も定期的にアップできるようにしたいと思います。

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