実践的な数学的思考法
初歩からわかる数学的ロジカルシンキング (SCC Books 385) 永野 裕之 エスシーシー 2015-09-07 |
出版社エスシーシー角井さまから献本いただきました。ありがとうございました。
ロジカルシンキング(論理的思考)というと以下のような
トピックが頭に浮かびます。
So What / Why So
ロジックツリー
MECE
フレームワーク
本書では、上記要素はほとんど(MECEだけ)出てきません。
タイトルに「数学的」とあるように、数学ででてくる考え方を
利用した思考法の書籍です。
数学を利用したものですが、小難しいものではなく、
例示されている事例も身近でわかりやすいものになっています。
(ドラえもんは生物として認められるのか、など)
また、内容も「因果関係」「対偶・背理法」「十分条件・必要条件」と
いった基本的な考え方から、「フェルミ推定」「ゲーム理論」といった
ツールの紹介など多岐にわたっています。
数学的なアプローチでの思考法を学びたい方にお勧めです。
■数学とロジカルシンキング
ロジカルシンキングと数学はどのように関連づくのでしょうか。
本書では、ロジカルシンキングの構成要素を2つに分類しています。
① できるだけわかりやすく説明する(コミュニケーション能力)
② 正しいことが明白な結論を導く(問題解決能力)
一方、数学を学ぶ目的については
論理的に考える力を養い、その道筋を正しく表現する力を磨く
と述べています。
つまり、「論理的な考える力」をつける事で、「問題解決能力」の力が付き、
「道筋を正しく表現する力」を鍛えると「コミュニケーション能力」を
あげる事ができます。
■数学の世界を問題解決に利用する
本書では数学の世界(学校でも習いました)で利用されている概念の
解説と利用方法について記載されています。
その中で、いくつかをご紹介します。
【因果関係】
「1つの原因から1つの結果が決まる」ことを因果関係といいます。
因果関係を意識するとどのような思考になるかというと
「ものごとは何によって決まるか」を考えるようになります。
結果には必ず原因がある、それが1つの場合は因果関係が成立している
ことになります。ある事象に対して、その構成要素を探すという思考は
問題を適切にとらえ、細分化された問題に対して正しい解決アプローチを
とる事ができます。
(本書ではでてきませんが、ロジックツリーを作成する際には因果関係の
考え方をベースに事象をブレークダウンしていきます)
【十分条件と必要条件】
「PならばQである」が真のとき
Pを(Qであるための)十分条件
Qを(Pであるための)必要条件
という
上記は教科書的な定義ですが、この考え方は怪しいものを
見分けるために利用できます。
例えば(ものすごく、簡単ですが)、
「ほ乳類ならば、人間である」
という命題は偽ですが、その理由は「ほ乳類」が「人間」の
十分条件になっていないからです。
■編集後記
本書は他のロジカルシンキング書籍とは違ったアプローチをとっています。
ロジカルシンキング的要素というよりも数学的要素の方が強いです。
かといって数学が苦手な人にも読みやすい内容になっています。
個人的には数学の効果的な利用方法を学ぶ事ができて、
非常に有益な一冊でした。
また、(本エントリーでは未記載ですが)フェルミ推定の解説を読んでいて、
「システム開発の見積り作業はフェルミ推定だな」
と思いました。
不確定な部分に関しては、仮説と推定量を置き、それを
ベースに答えを求めていくアプローチはまさに見積り作業そのものです。
(推定量がKKD(勘・経験・度胸)になるときもありますが。。。)
自分がやっている作業に繋がる内容が書かれている書籍を読むと
「なるほど、自分はそうやっていたのか」
と納得する部分が多いです。
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