正しい課題設定とその解決技術
新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術 齋藤 嘉則 ダイヤモンド社 2010-04-16 |
『問題解決』という命題に対して一番難しいのはなんでしょう。
個人的には『課題設定」だと思っています。
起きている事象を適切に捉え、不足している部分は仮定を置き、
その上で『何が問題なのか?』ということを設定する。
正しい方向性をもった『課題設定』ができれば、あとは決まった
方向性に向かってパワーを集中すればいい。
本書はマッキンゼーのコンサルタントとして活躍していた著者が
戦略コンサルタントが活用している、思考、技術について
事例(実体験やケーススタディ)を交えて解説した一冊です。
思考編、技術編ともに非常に実践的で、すぐにでも活用できる内容になっています。
■ゼロベース思考
もの事を考えるとき、一番ネックになるのはなんでしょう。
それは、「既成の枠」です。簡単にいうと、自分自身の経験です。
人は何かを考えるときに、自分自身の経験という枠の中に
当てはめようとしてしまいます。
ゼロベース思考とは、この枠の制約を外し、別のアプローチを
考えるためのスキルです。
本書では、ゼロベース思考のポイントを2つ挙げています
・自分の狭い枠の中で否定に走らない
・顧客にとっての価値を考える
一つ目は前述した内容。
二つ目は立場を変えた目線を持つためのテクニックです。
立場を変えると思考も変わってきます。
供給者である私たちの視点ではなく、受給者である顧客に
とって何がうれしいのか、を考えると別の角度で物が見えてきます。
■仮説思考
決まっていないことが多い状況に身を置かれると、
「わからないことが多いから決められない」
という思考に陥りがちです。
これは、ファクトのみで判断する思考で、アクションに繋がりにくい考え方です。
仮説思考はファクトのみで判断するのでなく、仮説を立て
それを前提にアクションへ落とし込む考え方です。
本書では以下の3つをポイントしてあげています。
・アクションに結び付く結論を常に持つ:結論の仮説
・結論に導く背後の理由やメカニズムを考える:理由の仮説
・「ベスト」を考えるよりも「ベター」を実行する:スピードを重視
個人的には3つ目のポイントがとても大事だと思います。
机上の空論で終わらないために、実行➡フィードバック➡カイゼンという
プロセスを早く回すことが、仮説の精度を上げるためのポイントです。
また、設定した仮説に定量情報が付加されている場合は、
その後のカイゼンがしやすくなります。
■MECEとロジックツリー
本書では、技術編として挙げられるのが「MECE」と
「ロジックツリー」です。
MECEは「モレなく、ダブリなく」事象を分析する手法です。
本書の中で個人的にポイントと思ったことは
MECEでとらえ、最後に優先順位をつけているか?
という記述です。
事象を分析しても、活用できる資源(人/物/カネ)は限られています。
その限られた資源を有効に活用するために優先順位付けは必須になります。
ロジックツリーは問題の原因を深堀したり、解決策を具体化するときに
利用する技術です。
一つの問題を階層化してその根本原因を探っていく手法なのですが、
作成する際のポイントを本書では以下のように定義しています。
・各レベルができるだけMECEか
・ツリーの右側が具体的な原因や解決策になっているか
・具体的な原因や解決策がロジックの因果関係で主要課題にリンクしているか
これらのポイントは作成中に都度チェックすることで、
ロジックツリーの精度を上げる事ができるでしょう。
ロジックツリーに関しては、以下の良書がありますので、
そちらも併せて読むとより理解が深まります。
※20150712追記
下記の本はロジックツリーに関する本ではなく、
ピラミッドストラクチャーに関する本でした。
考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則 バーバラ ミント グロービスマネジメントインスティテュート Barbara Minto ダイヤモンド社 1999-03 |
■編集後記
本書で書かれている内容は、コンサルタントに限らず、
すべての職種に適用できるスキルだと思います。
特に仮説思考などは、プロジェクトマネジメントへの
適用がかなり有用だと感じました。
システム開発において、プロジェクトが始まっても、
未確定要素がたくさんあります。それを一つずつクリアしながら
サービスイン(システムが動き始める)まで無事にドライブする。
プロジェクトマネージャはそんな仕事です。
プロジェクトマネジメントに仮説思考を適用すると、
プロジェクトチームの方向性を一定にする事ができ、
方向転換する際も論理的な考え方でする事ができるような気がします。
本書で得た知識をシステム開発にどう活かすか、という内容は
別エントリーで書きたいと思います。
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