世界一流エンジニアの思考法 牛尾剛著

書評

生産性を上げる鍵はテクニックでなく思考法(マインドセット)

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日々の仕事をしていて、「会議が多くて自分のタスクが全然進まない」「タスクが多すぎて残業ばっかりしている」「生産性が上がらない」と悩んでいるビジネスパーソンは多いと思います。一方、タスクを効率的にこなし、働く時間も少なく生産性が高い人もいます。この違いはなんでしょうか?本書ではこの違いはテクニックやTipsなどでなく、「思考法(マインドセット)」だと述べています。

本書は米マイクロソフトでエンジニアとして働く著者が一緒に働く「世界一流のエンジニア」は何が違うのかをまとめた一冊になります。著者がエンジニアということもあり、ソフトウェア開発・システム開発に関する内容が多いですが、他の業界に従事している方にも取り入ることができる内容がたくさんあります。

本書の目次構成は以下の通りです。

第1章 世界一流のエンジニアは何が違うのだろう?ー生産性の高さの秘密
第2章 アメリカで見つけたマインドセットー日本にいるときには気づかなかったこと
第3章 脳に余裕を生む情報整理・記憶術ーガチで才能のある同僚たちの極意
第4章 コミュニケーションの極意ー伝え方・聞き方・ディスカッション
第5章 生産性を高めるチームビルディングー「サーバントリーダーシップ」「自己組織型チーム」へ
第6章 仕事と人生の質を高める生活習慣術ー「タイムボックス」制から身体づくりまで
第7章 AI時代にどう生き残るのか?ー変化に即応する力と脱「批判文化」のすすめ

本書に書かれている内容は複雑な方法論を利用しているわけでもなく、高価なツールの利用を推奨しているわけではありません。至ってシンプルで、誰にでもできることが書かれています。例えば、「脳に負荷をかけない」「一度にやる仕事は1つだけ」「無駄に試行錯誤しない」「理解に時間をかける」などです。生産性が高い一流のエンジニアたちも私たちと同じ人間なので、なんでもすぐにできてしまうわけではないですが、生産性を上げるための考え方(マインドセット)が違うということです。

紹介されている考え方の中で個人的にとても重要だと思った内容を3つ紹介します。

まず1つ目は「理解に時間をかける」です。自分が知らなかったり、詳しくない事柄について理解せずに進めようとすると、再度同じ事柄に当たった際にまた一から理解し直す必要があります。そのため、時間がかかってもちゃんと理解することが大事です。本書では理解の3要素として以下のことが記されています。

<理解の3要素>
・その構造を掴んで、人に説明できること(explainable)
・いつでもどこでも即座に取り出して使えること(anytime usable)
・知見を踏まえて応用がきくこと(applicable)

「人に説明できるようになる」というのは理解の基準としてよく使われますが、いつでも引き出せる、応用が効く、という要素も納得です。

2点目はマルチタスクは生産性が最低なのでやらないです。コロナ後に在宅勤務が当たり前になった昨今。リモート会議も多くなっているため、会議中にChatやメール対応をしてしまうこともあります。ただ、これ(マルチタスク)はNG。理由は生産性が悪いからです。ワシントン大学の人間の脳の発達する研究によると、マルチタスクにより「生産性が40%低下」「仕事を終えるまでの時間が50%増加」「ミスの発生が50%増加」するそうです。

WorkInProgress(今やっている仕事)=1を徹底する。会議も自分の関係ないことでも集中してきく。これはすぐにでもできる内容かと思います。

最後は「毎日4時間をブロックして、Teamsもメールも一切閉じて、自分だけの作業をする」です。やることを1つに絞って、やる時間を確保することで確実に作業を進めていくための施策です。私は本書を読んでこれをやってみましたが、効果は抜群です。まとまった時間を作らないとできないような作業を何の割り込みもなく進めることができます。メールはChatメッセージが来ていないか気になることは気になるのですが、返信が数時間遅れてもそこまで影響がないこともわかりました。4時間通しで通しで確保するのは難しいので、1時間を4枠とかでもいいと思います。

本エントリーでは個人的に気になった箇所を3点取り上げましたが、それ以外にも「Be Lazy」「不確実性を受け入れる」「タイムボックスを取り入れる」など、明日からでも取り入れることができる考え方が満載です。

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