家業から企業へ
脱・家族経営の心得―名古屋名物「みそかつ矢場とん」素人女将に学ぶ 藤沢 久美 幻冬舎 2008-08 |
※株式会社プラチナム 肖様より献本御礼
家族で事業を行っている家族経営企業。
この形態の企業には、普通の企業とは違う悩みがあります。
本書では、家族型経営の飲食店である「みそかつ矢場とん」の
女将の言葉をベースにシンクタンクであるソフィアバンクの藤沢さんが
悩み解消のポイントを見出しています。
ポイントは心得として、以下の5つに分類されています。
「改革」の心得
「経営者」の心得
「商売」の心得
「人材育成」の心得
「事業継続」の心得
お店を家族で始めて、その後企業になるにはどのような試みをしたのでしょうか。
■改革の心得
長い間家族や親しい人たちと仕事をしていると
どうしても「馴れ合い」や「なあなあ」な関係ができあがってしまいます。
そんな意識や習慣を打破するためのポイントが紹介されいます。
《メニューは戦略書》
お店の顔とも言えるメニューがおざなりだと、お客さんはこのお店の
何が売りなのかがわかりません。
お客さんに何を食べてもらいたいのか?
このお店の顔はなんなのか?
それを意識してメニューをつくるからメニューは戦略書なのです。
注文して欲しいもの、時間がかかるのであまりして欲しくないもの。
これらを意識しないとお店の効率や収益性も変わってきてしまいます。
《変化は徐々に》
何事も急激な変化は拒否反応が強いです。
ちょっとしたことを徐々に変えていくことでいつの間にか大きな変化になって行きます。
矢場とんでは、食器を少しずつメニューにあったものに変えていきました。
女将一人で始めたことを徐々に広めていったそうです。
こうやって書くのは簡単ですが、なかなかうまくいかないのが現実です。
経営者であるおかみが辛抱強く進めていったことが結果として出たのだと思います。
《リーダーは背中で示す》
改革を進めていく上で、リーダーの言動は重要です。
リーダーが思っていることをはっきりと伝えることで意識疎通ができます。
ただ、言動だけでは不十分です。
リーダーの行動が言動と乖離していたら周りはついてきません。
『リーダーの行動』=『リーダーの背中』
背中で示してこそ、先頭を走れるのでしょう。
《ビジネスライク》
昔からの取引先というは、期間や金銭に対して「仕方がない」という
感覚が残っています。
商売は人の繋がりも大事なので、すべてを否定するわけではありません。
しかし、通常企業ではこのようなことは絶対にありません。
家族型企業も通常企業になるには、すべての取引先と
『ビジネスライク』な関係(共存共栄)になる必要があるのです。
■経営者の心得
サラリーマン家庭に育った女将が家族経営企業の習慣とのギャップに悩み、
発した言葉から経営者の心得が伺えます。
《価値観》
金銭感覚という意味で言うと個人マネーであるサラリーマンと
企業のお金を扱う商売屋は違います。
しかし、「今あるお金を有効活用する」という本質的な価値観は同じなのです。
環境が違うから価値観が異なるという既成概念をとると、
サラリーマンでも商売屋でも本質的な価値観は同じという答えが見つかります。
⇒実はこれは通常企業と勤めるサラリーマンにも同じことが
いえるのかもしれません。
《売上げ》
売上げの捉え方は経営者にとってとても重要なことです。
売上げを自分のものと考えてしまうと、何でも「経費で落とす」となってしまいます。
売上げは頑張った従業員のものでもあるのです。
頑張った従業員への感謝の意味をこめて還元するのがよいでしょう。
還元することで従業員は次も頑張る意欲がでます。
《品質管理》
食品を扱う会社の品質管理の肝は、「素直になる」ことです。
自分達が長年行ってきたことが必ずしも正しいとは限りません。
専門家である第3者に指摘されたことを「ずっとこの方法でやってきたんだ!」と
意固地になって突っぱねても何も得られません。
⇒この心得は、個人の能力アップのポイントでもあります。
「自分が正しい」と思っている人のカイゼンは難しいですから。
■感想
商売、人材育成、事業継続の部分は省きましたが、
ここにも女将の苦悩から導き出された心得が詰まっています。
家族型経営からの脱皮が題材の本書ですが、
環境は違えど停滞してしまっている通常の企業にも当てはまる内容が沢山ありました。
最後に、本書の中で思わずうなってしまった一言を紹介します。
「名物」「老舗」とは、変わらないことを意味するのではありません。
常に時代に受け入れられる存在であることを意味するのです。
■編集後記
昨日、本の整理をしようと思ったのですが、初めてすぐ断念しましたorz
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