1%の出会いの積み上げによる多読
遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣 印南 敦史 ダイヤモンド社 2016-02-26 |
「読みたい本がたくさんあるのに、時間がない」
「読んだはずの本の内容を忘れてしまう」
こんな悩みをもつビジネスパーソンは私も含め、たくさんいると思います。
かといって、特に対策もなく、時間ばかりが経ってしまい、気になった本は購入するので、積ん読状態。
このような状態をどのようにしたら、解消できるのでしょうか。
本書は、ライフハッカーで書評を書いている印南 敦史さんの読書術です。
印南さんは年間700冊の本を読むようですが、特に速読術などを活用している訳ではありません。
ご自身も「遅読家」だという印南さんがどのような読書をしているのか、
本書はその具体的なやり方が書かれています。
私と同じような悩みをもっているビジネスパーソンの方にお勧めです。
■フローリーディング
遅読家というのは、読書に対する「真面目さ」を捨てきれない人のことです
本書でいう「遅読家」の定義はこのようなものです。では、真面目さとは何か。
それは、
「本は熟読しないといけない」「本の内容は100%自分自身に写し取らないといけない」
という読書という行為に対する考え方。
本書では、この読書に対する考え方を変えてみるフローリーディングというものが紹介されています。
フローリーディングとは、「その本に書かれた内容が、自分の内部に”流れていく”ことに価値を見いだす読書法」です。
(中略)
フローリーディングは、膨大な情報が押し寄せてくる時代に最適化された「溜め込もうとしない読書」です。
「溜め込もうとしない」とありますが、ただ単に流し読みをする訳ではありません。
1冊の本から100%の情報を得るのではなく、自分にとって本当に大事な1%を得るための
読書法がフローリーディングです。
■読書習慣
「読書をする時間がない」という人は、読書が生活のリズムに組み込まれていないからだと著者は述べています。
生活のリズムに読書を組み込むポイントは、
①「毎日・同じ時間」に読む
② 速く読める本を選ぶ
③「昨日とは違う本」をいつも読む
です。
個人的にとても大事だと思ったのは、3点目です。
これを実践するには1日で1冊を読み切ることが条件になります。
何日もかけて同じ本を読んでも結局内容を覚えていないのであれば、
集中して1日で読み切った方が内容が残ります。
■内容のストック
読書はそれ自体が目的ではなく、そこから何かを得ることが目的です。
そのためには、読んだ本の内容をストックする必要があります。
本書での内容をストックするスタンスはとてもシンプルです。
ただ読むだけじゃなく、「書くための読む」ことへ意識を変えるわけです。
本を読むことを大げさに考え、「熟読の呪縛」にとらわれている人は、
「たった1回の読書で、本の中身を頭の中にコピーしてやろう」とずいぶんと
よくばりな考え方をしています。
もちろん、読書を通じてえるものがあってもいいのですが、この情報洪水の時代に、
すべて自分の中にため込もうとするのは無茶というものです。
だったら、「自分の中に情報を書き写そう」という意識を最初から捨ててしまい、
「自分の外に書き出せばいい」というスタンスで本と向き合った方がよくはないでしょうか。
本の中身を自分の外に書き出す方法は、以下の3ステップで行います。
① 1ライン・サンプリング(ハイライト集の作成)
② 1ライン・エッセンスの作成(気になった1行を選ぶ)
③ 1ライン・レビュー(どこに感動したのかを書く)
このように本の内容を抽出することで、自分の気になるポイントがわかります。
■サーチ読書術
フローリーディングでは、「熟読」ではなく、「正しい流し読み」が重要になります。
正しい流し読みをするためのポイントは以下の通りです。
ステップ① 「はじめに・目次」を読む
ステップ② 最初と最後の5行を読む
ステップ③ キーワードを決めて読む
ステップ④ 2つ以上の読書リズムで読む
詳しい内容は本書を読んでいただくとして、個人的にこの読み方をするためには
本の構成を正しく理解する必要があると思いました。
本の構成を理解すれば、流してよい部分とそうでない部分を判断できます。
また、ステップ③で書かれているものは、その本を読む目的に該当するものです。
カラーバス的な読書ですね。
■全体的な感想
読書に対するスタンスを見直すキッカケになった一冊でした。
私もかつて速読術を学習したことがありますが、定着させることはできませんでした。
本書に書かれている内容は非常に有用で、この内容であれば、多読することができます。
適用領域はビジネス本だけでなく、慣れてくれば専門書でもいけそうです。
昔セミナーで土井英司さんが、「速く読むコツはたくさん読むこと」と言っていました。
たくさん読めば知っていることが増えて、次に読む本で知っていることは読み飛ばせる、
その繰り返しで速く読めるようになる。
本書はまさにその多読メソッドにあたります。
本書の中にある「本棚はいつも自分自身を映す鏡」という一文にはドキッとしました。
改めて自分の本棚を見てみましたが、350〜400冊程度の本があり、そのほとんどが
1年以上開いてないものでした。
本棚に余裕があるから、ついつい購入してしまい、そのまま積ん読。
その繰り返しから脱却するためにも本書のメソッドを利用していきたいです。
コメント