実践型クリティカルシンキング 佐々木裕子著

時間とレベルの定義がない目標は目標ではない


実践型クリティカルシンキング (21世紀スキル) 実践型クリティカルシンキング (21世紀スキル)
佐々木裕子

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2014-06-27
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クリティカルシンキングとは、ただ単に物事を批判的に見ることではありません。
本書での定義は「目指すもの」を達成するための思考ツールです。

また、本書のタイトルには『実践型』とついています。
実践型の定義を本書から引用すると以下のようになります。

実践型クリティカルシンキングとは、
・「目指すもの」を達成するために、
・「自分の頭」で考え、行動し、
・「周りを動かす」ための実践的な思考技術
なのです。

実践的クリティカルシンキングの要素は大きく以下の3つになります。
 ① 目指すものを定義する
 ② 何が問題なのかをクリアにする
 ③ 打ち手を考える

本書の構成は講義形式で事例に対して演習を行うようになっています。
自分で考えながら読み進めることができます。

■目指すものを定義する

物事を成し遂げるためには、まず「どこを目指すのか」を決める必要があります。
何も考えずに走っていても、どこにもたどり着くことはできません。

「目指すものを定義する」とは、
「なぜ、具体的に、いつまでに」目指すのかを決めること

本書では、上記のように定義するということを定義しています(紛らわしい表現ですみません)。
これは企業であれ、プロジェクトであれ、個人であれ、共通のものです。
目指すものが具体的になっているかどうかをチェックするには、SMARTチェックを利用します。

Specific(具体的)
Measurable(達成できたかどうかを事実で判断できる)
Action Oriented(アクションに落とせる)
Relevant(意義が明確)
Time-Limited(期限が明確)

SMARTチェックがすべてOKになってはじめて、目指すものが明確になっていると言えます。
例えば、「グローバル人材を増やす」などのよくある標語は全然ダメということです。
「なんで必要なのか?(R不足)、いつまで必要なのか?(T不足) 、何をすれば増えたと言えるのか?(M不足)」

物事を見るときにSMARTを軸にしてみると、それが単なる標語なのか、明確な目標なのかを
判別することができます。

 

■何が問題なのかをクリアにする

目指すものを定義できた後は、第2ステップとして「今とのギャップ」を明確にします。
問題を明確にするためのポイントは「分解」です。

ピラミッドストラクチャを始め、MECEなどのフレームワークが紹介されていますが、
個人的には「過度なフレームワーク信仰で陥りがちな3つの罠」という章がよかったです。

過度な「MECE・フレームワーク信仰」で陥りがちな3つの罠
① 「で?」となりがちな「一般論型」
② 抽象的すぎる「評論家型」
③ 爪の甘い「砂上の楼閣型」

ロジカルに物事を進めすぎたり、物事を上から見過ぎたりすると、この罠にはまってしまいます。
この罠(特に①②)の怖いところは、「反論しづらい」ということです。

「正しいことを言っているけど、全然解決にならない」
この状況は最悪なので、この罠に落ちないように気をつけたいです。

 

■打ち手を考える

最後のステップは「打ち手を考える」ということです。
打ち手については5つのステップという箇所が一番のポイントになります。

打ち手を考えるための5つのステップ
① まず、当たり前の答えを考える
② 当たり前の答えの対極を考える
③ アイデアの深堀をする
④ 発想を広げる
⑤ 目標設定と照らし合わせながら絞って、さらに深堀する

一つ一つの詳細は本書をご覧いただくとして、個人的には「② 当たり前の答えの対極を考える」が
ポイントだと思いました。
線形的な思考では「この方向で考えよう」となった場合、その反対にまで考えが及びません。
「反対の方向ではどうなるか」と意識することで、発想の幅も広がると感じました。

 

■全体的な感想

すべての職種の方に役立つ書籍だと思います。
クリティカルシンキングというものを実例を踏まえて、解説しているので、
読者が考えながら読み進めることができます。

自分の仕事に照らして考えてみると。。。
システム開発の現場での問題解決はプロセスフローとの付け合わせがよく使われます。
(というより、私個人はこれが一番好きです)

システム開発では一般的には
 要件定義➡設計➡開発➡テスト
という流れで工程が進んでいくのですが、その工程の中をさらに
プロセス(主に作業やタスクに分解されたもの)にわけて、それをフローにします。

今起きている事象がどのプロセスに起因するものなのか。また、どのプロセスへの
影響があるのか、を明確にして優先度や期限を決めていきます。

本書で記載されているSMARTや打ち手の考え方はこのプロセスフローとの付け合わせの
中で利用すると効果が高いように思えます。

 

■編集後記

前回のエントリーでは前半に書籍の内容に関して自分が感じたことを書いてみましたが、
今回はその形はやめました。理由は「書きにくい」からです。

自分のスタイルとしては、やはり前半は書籍の紹介をして、詳細部分について
少しずつコメントするという形があっているようです。

ただ、ビジネスパーソンとしての書籍に関する自分の感想を書く部分がなかったので、
今回からそれを追加してみました。

今後も少しずつ書きやすい形を模索していこうと思います。

 

■関連エントリー

新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術 齋藤 嘉則著

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