KKD(勘・経験・度胸)に依存しないために
統計学が最強の学問である 西内 啓 ダイヤモンド社 2013-01-25 |
統計学という学問が注目されてきて数年が経ちます。
そのキッカケとなった本書の発売も2013年。
この2年間の中で統計学という学問の認知度もあがり、
様々な分野で使われるようになりました。
本書は統計学という学問の基本的な考え方をベースに
様々な事例を用いて、「どのようにデータを活かすか」と
いう観点で書かれています。
私が所属しているIT業界は「KKD(勘・経験・度胸)」という言葉があります。
これはプロジェクトの工数を見積るときに、経験豊富な方々が
「えいや!」と数字を出すときに使う物です。
※ こうやって見積った工数でプロジェクトを始めると
だいたい失敗します。。。
統計学を用いた定量的な考え方を工数見積り等に取り入れると
少なくとも今の属人的な状況からは脱出できるかと思われます。
ただ、そのためには
「データの収集の仕方」
「収集したデータから何を見るか」
ということが重要です。
本書はこの点についても触れています。
■様々な分野に適用可能な統計学
統計学というのは学問ですが、ある分野に特化したものでは
ありません。
どのような分野であっても
データ収集➡データ分析➡アクション
というプロセスを確立しています。
この一連のプロセスの中で「データ分析」部分に統計学は
活用されることが多いでしょう。
サンプリング調査であってもそのデータ量の母数に対する
妥当性や分析結果の妥当性(誤差や信頼性)などを統計学は学問として証明しています。
■ITとの融合により注目度アップ
統計学の実の部分は基本的に数学の世界です。
一昔前は紙とペンでの作業がメインだったので、
作業ワークロードに限界がありました。
この限界を突破できるようにしたのがITです。
PCが一般的に普及した事により、簡単な統計解析などは
Excelなどを利用すれば簡単にできます。
Rなどを利用した統計解析が主流になり、データソースも
一般的なアンケートデータから、ライフログやIoTから
収集されるデータに変化していっています。
最近ではセルフサービスBIというサービスも提供され、
データ分析を専門家に依頼しなくてもユーザが簡単に
できるようになってきています。
■ビジネスに活かす
データは収集して、分析すれば終わりではありません。
その結果、「で、どうすればよいか?」ということが
ビジネスでは必須事項です。
本書では、ビジネスへ活かすための3つの問いが
掲載されています。
【問1】何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
【問2】そいうした変化を起こすような行動は実際に可能なのか?
【問3】変化を起こす行動が可能だとしてそのコストは利益を上回るのか?
個人的に上記問いはビジネス活用のキモだと思います。
何も生み出さないデータ分析は無駄でしかありません。
その後、どうすればビジネスが発展するのか、を考えるため、
この問いを常に頭に入れておく必要があります。
■編集後記
本書では具体的な数字やグラフの説明などが
多数掲載されています(本エントリーでは割愛していますが)。
※ フィッシャーのランダム化に関するミルクティー調査とかは
読み物としても面白い事例かと。
この事例を見るだけでも普段接している数字や調査結果に
対して、「その妥当性を検証する目」を養うことができます。
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