1人1人が欲しい情報
インフォコモンズ (講談社BIZ) 佐々木 俊尚 講談社 2008-07-17 |
インターネットが発達したことで、人が情報を取得する行為が
圧倒的に簡単になりました。
そんな中、ウェブの発展に伴って情報による人と人との繋がり方は変化しています。
Web1.0といわれていた時代は、企業やマスメディアが
一方向に情報を発信し、個人は受動的に情報を受取っていました。
Web2.0はSNSやブログを使って、個人でも簡易に情報を発信できるようになり、
情報のフラット化がされました。
同時に、流れる情報量も爆発的に増え、個人は受動的にその中から
情報を選ぶ形態が構築されました。
では、今後のウェブを使用した情報のやり取りはどうなっていくのでしょうか?
本書では、「インフォコモンズ(情報共有圏)」というものを定義し、
人と情報のつながりやWeb3.0への課題が提起されています。
これからのウェブを考える上で、とても参考になる一冊です。
■情報の渦
ウェブの進化に伴い、人々が受取る情報量は指数関数的に
増大していっています。
本書によると、2002年時点で1人が受取る情報は本5千冊くらいに
なっているそうです。
こういう状態で何が起こるかというと、脳に対する『過負荷』です。
脳に過剰な負荷をかけると、前頭葉がパニックを起こすみたいです。
この状態を『認知限界』といいます。
⇒ウェブの世界に限らず、普段の仕事でも情報があふれていると
一種の「思考停止」状態になってしまうことがあります。
これも脳の仕組みに関連しているんですね。
⇒ウェブリテラシーという言葉が重要と昨今語られています。
玉石混交の情報の中で、どのような情報が自分に有益なのか?
それを探すことは、これからのビジネスパーソンには必須ですね。
■インフォコモンズの誕生
情報の渦から効率的に情報を獲得するために生まれたのが、
『インフォコモンズ(情報共有圏)』です。
情報共有圏とは、個人が必要な情報をやり取りするエリアのことです。
例えば、金融系のビジネスを行っている人がその情報を必要としている
別の人々とある空間でやり取りを行う。
情報共有圏を構築する代表的なサービスがSNSです。
Mixiなどでは、コミュニティという場があり、その場には
同じ情報を欲している人々が情報のやりとりをしています。
■インフォコモンズの限界
情報の渦からの回避を目的として生まれたインフォコモンズですが、
問題がないわけではありません。
背景として、Web2.0の概念があります。
企業やメディアが発信する公的な情報と個人が発信する私的な情報が
フラット化されてしまったことで、発信する個人にも発信する情報に
対して責任が生まれてきます。
しかし、コミュニティ等で情報をやり取りしている人々向けに
個人が情報を発信してもそれが必ずしも私的なものとはなりません。
不特定多数が触れる情報は公的な情報なのです。
つまり、私的な情報が公的な空間まで侵食してきているということになります。
インフォコモンズでは、これらの認識相違を起こしやすいという問題点があります。
■新しい情報アクセス
ウェブの進化によって、様々な人がウェブを利用するようになりました。
それにより、今まで以上に重要視されるのが検索エンジンです。
検索エンジンは、膨大なウェブ上の情報を絞り込んでくれる
とてもよいサービスなのですが、以下のような問題を抱えています。
《ノイズ減らし》
検索キーに対して、検索エンジンは結果を返します。
しかし、その中にはシグナルとなる有益な情報もありますが、
ノイズとなる意味のない情報も入ってしまいます。
検索エンジンは、このノイズを以下に減らすかということに苦心しています。
⇒Googleのページランク方式はこのノイズ減らしを機械的に
行っている良い例だと思います。
《たこつぼ化》
検索結果を有益なものに絞り過ぎてしまうと、排除された情報の中に
有益な情報が埋もれる確率が高くなります。
つまり、「情報がたこつぼ化」されてしまうのです。
上記2つの問題は、対応内容が背反であるため、解決アプローチが難しいです。
本書では、現在の検索エンジンから一歩進化した形のアクセス方法を
定義しています。
そのアクセス方法は、以下の4つの内容から定義されます。
・暗黙ウェブ
・信頼関係
・可視化
・非対称性
■暗黙ウェブ
新しい情報アクセス方法の1つ目の定義である「暗黙ウェブ」を紹介します。
従来は、個人の特性を知るためには、アンケート等により、個人の情報を
収集していました。
しかし、アンケートに答える煩雑さや、個人情報を収集される懸念から
この方法は衰退していきました。
そこで、登場したのが『暗黙ウェブ』です。
暗黙ウェブとは人の行動履歴により情報を提供する方法です。
この方法を採用しているのが、アマゾンの協調フィルタリングです。
アマゾンでは、購買履歴を元に関連商品のお勧めをします。
これは、その商品を買った人が他のどの商品をよく買ったかという
『行動』を情報の元としています。
本書では、zero-zoneというサービスが紹介されています。
このサービスは「ヘイズ理論」を応用して人が情報を選択する確率を計算しています。
■感想
ウェブという世界の中で情報の流れがどのように変化していくのか、
これからのウェブというものがどこへ向かっていくのかがわかる一冊でした。
新しい情報アクセスに関する定義は、本書のキモになる部分なので、
「暗黙ウェブ」以外は割愛します。
ウェブを利用して、情報をやり取りしているビジネスパーソンに
とって、ウェブの方向性は非常に重要な事だと思います。
■編集後記
11月は1冊も紹介せずに終わってしまいました。
今年もあと1ヶ月。
ブログに仕事にプライベートにがんばります。
■マインドマップ create by jude-think
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