中規模開発リーダーが考えること
新米リーダーの不安 渡辺 紳一 技術評論社 2007-01-20 |
本書はシステム開発に焦点を当てた本です。
一般的なリーダー論とは違い、SE(システムエンジニア)から
中規模開発のリーダーへ転進する人が各フェーズで考えるべきことや
状況別解決方法がQA形式になって記載されています。
■中規模システム開発とは
中規模というのはだいたい60人月※くらいのシステムのことを
本書の基準としています。
※人月とはシステム開発の規模を表す単位の一つで、
何人が1ヶ月取り組むことで、システムができるという意味です。
この規模のプロジェクトは会社的なサポートも弱く、
上層部からは『できて当たり前』と思われることも多いです。
こんな特徴をもつ中規模プロジェクトですが、
本書の中で定義している成功ポイントは主に以下の3つです。
【80点主義】
すべての完璧にこなそうとしない。
優先順位付けをして、常に正しい(と思われる)方向へ導く
【現実主義】
「~すべき」という理想論を追い求めない。
事実に注力する意味。
【プロジェクト至上主義】
プロジェクトは参画するメンバーのものであると考え、
組織的な圧力に屈しない。
ちょっと誤解を生みそうな定義になっています。
作るシステムは顧客のものであることは間違いないですし。。。
■要件定義のポイント
要件定義とは、どのようなシステムを作るかを明確にする
フェーズです。
ここでのポイントは以下の2つ
【目的の明確化】
顧客のやりたいことがはっきりしない、なんとなくこんな感じにしたい、
そういったやりとりがこのフェーズでは良くある。
そんなときに、顧客の視点でシステム化目的を考える。
目的が明確化されれば、それに付随して関連仕様が決まってくる。
仕様の整合性などもこの『システム化目的』がなければ、
とることが難しい。
【事実の洗い出し】
現状分析・整理を行う段階で、注意すべきことは『事実』を
洗い出すことである。
「~べき」という視点を持ってしまうと、事実が隠れてしまう可能性もある。
■マネジメントのポイント
マネジメントは目的の明確化・リスク・モチベーションの管理が重要である。
【目的の明確化】
システム開発をする側からのシステム目的を明確にする。
QCD(品質・コスト・納期)は大事だが、それだけが目的ではない。
QCD以外の目的としては、
『技術的課題解決』
『ノウハウの蓄積』
などを掲げることができます。
【リスク管理】
リスク管理は以下の4段階に区分できます。
・リスク削除
・リスク移転
・リスク回避
・リスク保有
中規模開発では、リスク削除を常に目標とするべきである。
移転・回避・保有はなるべくさけ、解決できるリスクを
増やしていくことが大事である。
【モチベーション管理】
モチベーションは、プロジェクトの目的を明確化することで、
マグレガーのXY理論のY理論部分を満たすようにする。
プロジェクトの成否はメンバーのモチベーションに起因するところが
多いにある。
「面白そうな開発」と感じさせれるようにする。
■まとめ
この本は完全にシステム開発に携わっている人が対象になっています。
専門用語も多発しているので、対象者でない人にはさっぱりわからないと思います。
内容的には、リーダー論というよりかは
システム開発時の注意点をソフトウェア工学視点+著者の経験を
元に書いているという感想です。
☆プレイングマネージャ
☆知識総動員によるリスク管理
☆顧客視点
お薦め度:★★★☆☆+理論と実践
書評後記
ブルックスの法則※に反した人海戦術はまだまだ残っています。
※「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加はさらに遅らせるだけだ」
というプロジェクトマネジメントに関する法則である
こういう良くない慣習は早くなくしたいものです。
コメント
こんにちは。
まさにこういうポジションで仕事をしてます(汗)
身に覚えのある話題が多いです。
システム化の目的、要件定義以前で固まっているのが一番良いと思っています。
こんばんは!
コメントをくださってありがとうございます。
80点主義というのは分かります。どこかで切らないと進まないということもありますし。
自分の思う100点がお客様にとっても100点なのかと問われたことがあって、とても印象に残っています。
コメントありがとうございます。
>LuckyUSさん
システム開発の要件固めの難しさは最近身にしみて感じてます。。。
>手文庫さん
>自分の思う100点がお客様にとっても100点なのか
印象的な言葉ですね。
自分の世界にのめりこんでしまうと、ついつい『誰のため』というのが
抜けてしまいがちですからね。
私もたまにやってしまいます。
改めて、気をつけます。