「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する 坂井 豊貴著


投票者の意見が一番反映される決め方は何か?


「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する 「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する
坂井 豊貴

ダイヤモンド社 2016-07-01
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ダイヤモンド社上村さまより献本いただきました。ありがとうございました。

「決め方によって結果が変わる」

これは本書の第1部のタイトルであり、本書で語ろうとしているものの主題です。
一般的に物事を決めるときには、「多数決」を利用することが多いです。
ただ、多数決は「票の割れ」を起こしやすく、投票者の意見を適切に吸い上げる制度ではありません。

本書は主に選挙戦を例にとり、多数決を含む決め方がその結果にどう影響するかを解説しています。
(アメリカ大統領選の話が主で、具体性があってとてもわかりやすい)

また、「決め方」について、多数決以外のものが多数紹介されています。
特に「民主的な決め方」として紹介されている「ボルダルール」は「なぜ民主的なのか」がわかりやすく解説されています。

後半には「多数決の確率」ということで、多数決が正しく機能する条件や
その確率の求め方を定義し、実際の陪審員制度に当てはめての考察が行われています。
この例もとても分かりやすく、腑に落ちるものでした。

多数決という決め方に一度でも疑問を持った人にはオススメです。

 

■多数決は平等か?

2015年5月17日に大阪市で、大阪市を廃止して代わりに5つの特別区を設置するという
「大阪都構想」への住民投票が行われた。結果は、反対が50.4%、賛成が49.6%。
僅差の反対多数で否決になった。
(中略)
でも、イエスに投票した有権者もそこまで極端な案を求めている人ばかりではないだろう。
ノーに投票した有権者も、現状で良いと思っている人ばかりではないはずだ。
イエスとノーの間にも、濃厚のグラデーションがある。

これは昨年話題になった「大阪都構想」を例にしたものです。
最後の一文「イエスとノーの間に濃厚なグラデーションがある」という部分が
多数決が平等とは言えない理由の一つになります。

ある政策のうち、この部分は賛成、この部分は反対という形で投票することができれば、
より投票者の意見を吸い上げることが可能になります。
しかし、多数決は政策パッケージに対してイエスかノーの2択しか選ぶことができません。
そのため、イエスに近いノーは0点、ノーに近いイエスは100点と判断されてしまいます。

このような制度(決め方)は本当に平等と言えるのでしょうか。

また、多数決には「票の割れ」という問題点もあります。
「票の割れ」とは、意見の近い人たちが票を取り合うということです。

2000年のアメリカ大統領選では、民主党が指示するゴアと共和党が指名するブッシュが
二大政党による主要候補だった。当初の見込みだとゴアが有利だったが、途中で異変が起きる。
「第三の候補」として緑の党からネーダーが参戦したのだ。
ネーダーに勝つ見込みはない。だが彼の支持層は、ゴアの支持層とかぶる。
最終的にネーダーはゴアの票を一部奪い、それが致命傷となってゴアは敗北、
ブッシュが逆転勝利した。「多数決」というものの、その結果が多数意見を
反映するとは限らない。

このように多数決は「多数の意見が反映できない」という欠点があります。

 

■「民主的な決め方」であるボルダルール

多数決の一番単純な改善案は、決選投票を付けることだ。より本格的な代替案は、
「1位に3点、2位に2点、3位に1点」のように順位に配点するボルダルール。
いずれも票の割れの影響を抑えられる。では両者のどちらが、より民主的だといえるのだろう。
そもそも民主的な決め方とは、どういうものなのだろう。
多数派のためではなく(ノット・フォー・マジョリティー)、万人のため(フォー・オール)の
民主主義という観点から考えてみたい。

決戦投票とは多数決の上位2つに対して、再度多数決をとる方法。
ボルダルールとはスコアリングルールの手法の1つで、上記のように順位に点数を付ける手法です。
この2つの扱いの違いは、「2位以下の扱い」です。
多数決というのは、2位以下に対して白紙投票するというものですが、ボルダルールを使うと、
2位以下に対しても順位が付けられます。つまり、「広く支持されているもの」が選ばれるのです。

 

■決め方の精査

一見それなりに好ましい決め方はたくさんある。問題はそれらのうち、
どれが本当に優れているかだ。ペア勝者を選ぶことや、ペア敗者を選ばないことを基準として、
どの決め方がいかなる意味で優れているかを明らかにしよう。
多数決、決選投票つき多数決、繰り返し多数決、ボルダルール、そして是認投票。
建物に十分な耐震性を求めるように、決め方に人々の意思をうまく反映させることを求めるのだ。
支持の高い選択肢を選ぶこと、支持の低い選択肢を選ばないことを、決め方にテストしていこう。

人数 4 3 2
1位 A B C
2位 D C E
3位 E D D
4位 C E B
5位 B A A

決め方によって結果が違う例として、上記のような投票結果を使って説明がされています。
このような場合、決め方によりその結果は以下のようになります。
 多数決:A(1位に上げている人数が4人いるため)
 決選投票つき多数決;B(AとBの決選投票になり、元々Cを選んでいた人たちはBを上位にしているため)
 コンドルセルール(総当たり):C(すべての一騎打ちで勝者となる)
 ボルダルール:D(理由は割愛)
 是認投票:E(理由は割愛)

上記例では決め方によってすべて結果が異なっています。
このような結果になるため、「決め方を決める」ということが非常に重要な決定になります。

では、決め方を決める基準はどのようなものでしょうか。
本書の定義では、
 ①ペア敗者(すべての選択肢に一騎打ちで勝てない)を選ばない
 ②ペア勝者(すべての選択肢に一騎打ちで勝つ)がいる場合はそれを選ぶ
の2つを満たす決め方が好ましい決め方になります。

この基準に従うと、コンドルセルール(総当たり)が一番優れているように
見えますが、コンドルセルールはペア勝者がいない場合、何も選べない、という難点があります。
そのため、本書ではペア勝者基準を緩和(ペア勝者を1位にしないことをはあっても、最下位にしない)と
いう基準でボルダルールが優れているとしています。

 

■全体的な感想

選挙における多数決の問題点(情報が少ない、2位以下が0点)という話は
個人的にとても為になる内容でした。
選挙の度に候補者のHPなどを見るのですが、「この政策はこの人、別の政策はこの人がいい」と
いつも思っていたため、日本の選挙制度にもそれを選べるルールがあったらいいのに、と感じました。

本書を読んで普段慣れ親しんでいる多数決の問題点や利用に適したシーンなどを
知ることができたので、今後はこれを意識しながら使いたいです。

また、本書で紹介されているいくつかの決め方、特にスコアリングルールなどは
他の利用方法などがありそうなので、今後自分の生活やビジネスの中で軸を決めて比較する際には
活用していこうと思います。
※エントリーの中では大分割愛したので、詳細は本書を参照ください

 


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