トヨタの自工程完結 佐々木 眞一著


ホワイトカラーの生産性は上げられる


現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方 現場からオフィスまで、全社で展開する トヨタの自工程完結―――リーダーになる人の仕事の進め方
佐々木 眞一

ダイヤモンド社 2015-11-13
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日本ではホワイトカラーの生産性があがっていない、という意見は様々なメディアで目にします。
現にデータを利用した記事なども多くあり、実体としてそうなのでしょう。

トヨタといえば、「トヨタ生産方式」が有名ですが、それを支える活動として、「カイゼン」や「QCサークル」があります。
ただ、その活動自体はそもそも製造現場から生まれたものであり、ホワイトカラー職にまで適用ができていなかったようです。
そこで、生まれたのが本書のメインテーマである「自工程完結」です。
本書では、著者が中心として広げていった「自工程完結」という考え方や適用のポイントが記載されています。

事例がたくさん書かれているため、とても読みやすい内容でした。

 

■ホワイトカラーの生産性

ホワイトカラーの生産性があがらない理由は何か?
社員は怠けているわけではなく、とても一生懸命やっています。
その主な原因を本書では以下の6つあげています。

1.何のために資料をまとめるのか、「目的」の共有がない。
2.どんな資料をまとめるのか、「アウトプットイメージ」を共有していない。
3.どうやって資料を作るのか、具体的な「手順」が共有できていない。
4.それぞれの仕事で、どういう状態であれば大丈夫なのかが共有されていない。
5.仕事に必要な情報をもれなく把握できていない
6.手順やルールには、なぜそうするのか「ワケ」があるのに、勝手に判断してしまう。

この6つは基本的にホワイトカラー職全般に当てはまるのではないでしょうか。
IT業界でも同じようなことが原因で、多くの手戻りが発生しています。
基本的にはインプット/プロセス/アウトプットが共有されていないことが原因です。

 

■自工程完結

ホワイトカラーの生産性があがらない理由は前述した通りですが、プラスの原因として「心がけ」があります。
「心がけ」とは「明文化されていないが、気をつけよう」ということです。
このような個人に依存した「心がけ」から脱却するための仕組みとして、「自工程完結」があります。

本書で記載されているスタッフ部門の仕事における「自工程完結」のポイントは以下の通りです。

1.「目的・ゴール」をはっきりさせる
2.「最終的なアプトプットイメージ」を明確に描く
3.「プロセス/手順」をしっかりと考え、書き出す
4. 次の「プロセス/手順」に進んでよいかを判断する基準を決める
5. 正しい結果を導き出すために「必要なもの」を抜け・漏れなく出す
6. 仕事を振り返り、得られた知見を伝承する

これらのポイントを一言でいうと「暗黙知の形式知化」です。
「心がけ」は暗黙知の一部なので、それを見えるようにすることで、不必要な仕事の
洗い出し/削減をし、当事者でなくともできるようになります。

不必要な作業は以下のような質問をすることで削れるかどうか判断できます。
 ・このアウトプットは何に使うのか?
 ・このアウトプットはないと困るのか?
慣習的な理由でこれからも必要というものが以外にあるものです。
この質問をすることで、「特に使ってない」「それほど困らない」というものは
作業としても削ることができます。

 

■ホワイトカラーへの適用

トヨタのような大きな組織でこの自工程完結を広めるにはどのようなことを実施したのか。
本書で記載されている内容をまとめると、
 第1段階:スモールスタート(6人のプロジェクトチームから)
 第2段階:会社方針として掲げる(各部署が参加せざるを得なくする)
 第3段階:各部署から推進者を選出(伝導者の育成)
という順序になります。

第3段階で集まった人たちも様々なバックグラウンドがある人たちばかりなので、
その人たちへ浸透させるのも非常に苦労したようです(詳細は本書で)。

 

■全体的な感想

本書を読んで率直に、「トヨタでも普通の会社と同じ苦労をしているんだ」と思いました。
ただ、1点違う点は「活動の本気度」です。

普通の会社であれば、標語止まりになってしまいがちな「生産性向上」という活動が、
ボトムアップ/トップダウンのバランスをとって全社展開にまで進む。
これがトヨタの強みだな、と感じました。

システム開発の現場でも同じようなことがたくさんありますが、
世の中にはさまざまな自動化ツールがあり、「人の手を経由しなくても品質を確認する」方法が
たくさんあります。

ただ、これを十分に活用できているかというとそうではないという実感です。
十分に活用できていない理由はやはり「本気度」だと思います。
組織の上の人たちがその活動に対して短期的な効果を求めようとすると、普及は進みません。
短期的な視点でなく、長期的な視点をもって活動ができるかどうかが、生産性向上のカギになります。

本書の最終章には以下のような一文があります。

大事なことは、ぶれることなく続けていくこと

トヨタ生産方式もカイゼンも続けることで洗練されたものです。
企業としての取組みはやはり長期的視点が必要ですね。

 


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